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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない

「どうだった?昨日は」


真歩の言葉に――バクン、と全身が大きく脈を打った。

剛の入学式の事を聞いているのだと分かっていても、私の頭の中では別の質問に変換される。



――どうだった……?

色んな人を裏切って、隠れて若い恋人とセックスして、さぞや楽しかったでしょう?



「やめて……っ!!」


思わず耳を塞いで叫んでしまった私を、真歩がキョトンと見ていた。

私は、バクバクと鳴る胸を押さえながら、真歩から花を受け取り努めて明るく言った。


「ごめん……っ。
昨日のセレモニーで感激して、眠れなくて……
今寝惚けちゃったみたい。

お花、いけて来るね」


悟志の側のテーブルにある花瓶を持ち、真歩の顔を見れずにドアを閉めて洗面所へ駆け込んだ。
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