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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない


祐樹は肩をすくめると、私の額に掌で触れて真剣な顔で言う。


「ママ、大丈夫?
また貧血じゃないの?」


「……大丈夫……ありがとうね」


「ならいいけど~」


祐樹は、花野が好きで聞いている洋楽のジャズを出鱈目な英語で口ずさみ、手際よく食器を片していく。

ピアノを弾くのも好きだが、最近は歌うのもお気に入りらしい。

確かに、祐樹の声は不思議な響きを持っていた。

聴くと心が安らぐようで居て掻き乱されるような……

親馬鹿な感想を抜きにしても、一度聴いたら忘れない印象的な歌声なのだ。


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