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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない



「……っ……!」


突然の事で抵抗をする間もなく、唇にキスされる。

軽く触れるだけの物でも、身体を熱くするのには充分だった。

彼もそうなのだろうか。私に触れる指が微かに震え、熱が伝わってくる。

だがそれに反して彼の表情はクールだった。

私を魅了する、いつもの涼やかな微笑み。

長い指で頬にやさしく触れ、撫でて、甘い囁きで誘惑してくる。



「菊野は本当に可愛い……」


「――っ!!……も……もう剛さんたら……
からかわないで……」


彼を軽く交わして逃げようとするも、その甘い罠に嵌まってしまった私の身体は麻痺したように動いてくれない。

彼に抱きすくめられたまま、壁に押し付けられて頬に、首筋にキスされる。

私の全てが甘い反応をしている事に、彼はほくそえむ。



「そんな色っぽい目で見られたら……お休みのキスだけで終わらなくなりますよ」

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