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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない


「……祐樹は……まだ小学生だし……菊野さんと実の親子なんだってわかっていても……

俺……嫉妬しました」


「……」


「祐樹は何も意識しないで菊野さんに触れられる……

俺は……貴女の姿を見るだけで舞い上がってしまうのに……

邪な欲で支配されて……あんな風に気軽に触れる事など出来ない……」


「剛さん……」





彼の形の良い唇が動き、心地好い低い声が生み出されるのに、私は胸をときめかせる。

もう止めなくては、と理性が語りかけてくるが、正直な私の心は、彼を欲しい――と、負けずに叫んでいる。

欲しい……心も身体も丸ごと……

病室で眠る悟志の寝顔と、切なく見詰める真歩の瞳が過るが、胸の中に刺す痛みを残すことは出来ても、彼に惹かれるのを止めるまでは行かなかった。

彼のつるんと瑞々しく若い頬を優しく指でなぞると、それだけで彼を刺激したらしい。

瞳を揺らし、身体を震わせて苦しそうに口を結ぶ。

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