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愛しては、ならない
第32章 企み②


「ど……どういう……意味なのかしら」


私には演技は出来ない。

真歩にも言われたが、いい大人なのにポーカーフェイスのひとつも覚えられない自分が情けなくも思う。

涙が頬を伝い、唇がわななき、彼のシャツを掴む指が震える。

彼は目尻を下げて、唇を触れていた指を首筋に落とし、なぞった。



「そんな泣いちゃって……本当に可愛いなあ」


「お願い……っ……もうすぐ、剛さんが戻って来るわ……

離して……っ」


森本は、首を傾げる。


「どうかなあ。

清崎が、剛との仲を深めたがっているからね……

俺、彼女の相談役なんすよ。

剛と仲いいから。

どうしたら、剛が振り向いてくれるのかって。

はは。そんなの、迫ってみれば簡単じゃん、てアドバイスしておきました」


「――」


「今頃何処かであいつら……」


「……やめて……やめて!

そんなの、聞きたくないっ」



私は、顔を掌で覆って首を振り叫んでしまう。



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