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愛しては、ならない
第32章 企み②


彼は、残酷な程に綺麗に見える笑みを浮かべ、囁いた。


「けっこう、頑張りますね……

力じゃ、敵いませんよ?」


「森……本く……ふざけるのはやめてっ……」


「ふざけてる様に見えます?割と、いや、かなり本気なんですけど」


彼の指が唇に触れてなぞった瞬間、涙が溢れた。



(嫌……嫌……嫌よ……触らないで……!

剛さん……助けて……っ)


剛を思っても、彼は此処には居ない。

彼は今頃清崎と何をしているのだろうか?

私の態度に嫌気が差して、彼女と本気で付き合う事を決めたのかも知れない。

ひょっとしたら、彼と彼女は今頃――



絶望的な気持ちになり、嗚咽を漏らすと、森本がくつくつ笑った。


「剛に、助けて……て思ったでしょう」


「――!」


「ばればれですよ……菊野さんも、あいつも……ふふ」


森本が、悪魔のように見えて私は息を呑んだ。
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