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第39章 愛憎④

彼は中学で剛と出会った時、自分と似通う陰をその瞳の中に見たような気がした。

物静かで人当たりが良く優雅な物腰の彼は、クラスで友人たちに囲まれていても、時折遠い目を何処へ、というわけでなく向けていることがあった。

彼は今の両親と弟と血の繋がりがなく、養子なのだという噂は密かにあった。

今の家に迎えられるまでどんな子供時代を過ごしてきたのか、それは誰も知らなかったが。

清崎は彼に入学当初から惚れていて、彼女なりに彼に近づく方法を一生懸命に考え、努力していた。

彼女の推測だと、きっと剛は実の両親と不仲だったか、何か嫌な事をされて一緒に暮らせなくなったのではないか、という事だった。

それは森本も思っていた。

世の中の親たち全てが『まっとうな心正しき大人』ではない。

むしろ、そんな大人がどれ程の割合で存在するのだろうか。

森本は自分の父を苦々しく思い浮かべ、笑いたくなった。

一番身近にいい見本がいるじゃないか。