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愛しては、ならない
第39章 愛憎④



彼女は大人しそうな中に激情を隠す少女だった。

家や学校ではいわゆる『いい子』を演じているが、森本の前では素顔を曝した。

彼女の本当の顔を知ったのは偶然だった。

学校帰り、剛と他愛ないおしゃべりをして別れた彼は、ひたひたと忍び寄る気配に振り向くと、家の方向へと歩いていく剛を物陰から見詰める清崎を見付けたのだ。

その瞳はひたむきな熱がこもっていて、彼の心を動かした。

彼がとうに忘れてしまった一途に誰かを想うという愚かな感情。

この先どうなるのか見てやろうじゃないか、という野次馬にも似た思いが彼を動かした。

剛の後をつける清崎の後を、森本は付いていった。

彼女は剛しか見ていないのか、森本の事など全く気付く様子はない。



――恋をすると盲目になるとは、まさにこういう事か。


苦笑しながら彼は彼女の動向を見守った。




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