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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード

* * * * * * *

 翌朝、美優はなつみをスタジオまで送っていった。


 華やかにめかし込んだ美人カメラマンと、女児の眠るベビーカー。

 美優の隣に並び歩く二人は、ちぐはぐだ。


「仕事、いつまで?」

「夕方」

「そっか」

「帰ってきたら、美優が裸エプロンつけて、お帰りなさいって出迎えてくれたらなぁ」

「はっ、はだ──」

「うそうそ。良くんいるでしょ。家、まじで惜しい」

「──……」



 土曜日の朝のオフィス街は、人の足もまばらだ。

 こうしていると、美優もなつみと、そして咲希と、おりふし通りすがってゆく家族に倣って、これからどこぞの地下鉄線にでも乗り込むようだ。そして当然同じ場所に至り、同じ場所で他愛のない休日を過ごす。


 なつみを出迎えるのが美優であれば、どれだけ良いか。
 裸エプロンは遠慮したいが、もしこの美しい恋人に指定されたら、あるいは拒まないかも知れない。



 いつでも会えるところに住んでいた昔、美優は下着もつけないで、なつみの私宅を訪った。身体に淫らな落書きをして。


 法外の美人に愛想つかされまいと努める反面、美優はなつみにどんな姿でも晒け出せる。どんな姿でも受け入れてくれると信じていられる。
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