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私は犬
第14章 お友達?
名前も知らない親切な方は、あんなに勢い良くぶつかったにも関わらず、タクシーを止めて下さって、

「1人で大丈夫?心配だから送って行くよ。お家どこ?もしかして独り暮し?」と、何度お断りしても繰り返し申し出て下さった。

あれ以上のご迷惑をお掛けしたくなくて、できる限り丁寧にお断りしたのだけれど、あれで良かったのかしら?あぁ。あの親切なおじ様の髪の毛が、どうぞ増えますように。アーメン。




ジンジンと痛みを訴える赤い足の裏を冷やしながら、私の何がいけなかったのか。池ノ内さんが何故あんな事をしたのか。考えてみたけれどちっとも分からない。

彼女にも憎まれているのだろうか…。あの日の渡辺さんのように、死んで欲しいと。そう思われているのだろうか…。

だとしたら、死んで欲しいと思わせるような重大な何かを、私はきっとしたのだと思う。それが何なのか、ちっとも分からなくて胸が苦しい…。

友達…。池ノ内さんとは頑張っても友達にはなれないわと。そんな風に思いながらキッチンで白ワインを飲んだ…。

どれくらいそうしていただろう。来客を告げるチャイムの音が静かな部屋中に鳴り響いて、フッと我に返る。こんな時間に玄関前まで来られる人といえば、おば様以外思いつかない。

どうされたのかしら?慌ててモニターを確認すると、そこには音羽主任の顔が写し出されていた。
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