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私は犬
第16章 人並みになりたい*
「ほら。飲んでみろ。」

手渡されたのは、薄いレモンの欠片が乗った炭酸水にしか見えない。少し飲んでみるとジンジャーエールの味がした。

「旨いか?」

「うーん。お腹いっぱいになりそうだから、炭酸はもういらないわ。」

「お前、酒好きだろ?つうか、強いだろ?」

「へ?」

そうかしら?

「分からないわ。」

「飲んでばかりいないで食べなさい。身体壊すから。」

剛ちゃんみたい…。ちょっとうるさい所が同じだわ。これは食べないと、口に強制的に放り込まれる……。そう判断して目の前に並ぶ小皿たちを見てみた。よく分からないけど…。食べなくちゃ…。

何やら分からないまま、口に運んでみると、なかなか美味しい。このお豆腐の、赤くて辛いのはお酒に合うわね。ピリピリしていい感じ。匂いが鰻にかけるヤツと同じだわ。


「お前、さっき預けた荷物、あれ何だ?」

荷物……?何だっけ??んーっと………。

「あーっっっ!大変、忘れてた。私帰るっ!」

慌てて席を立つと、服を引かれて席に戻された。

「どこへ行く?」

「バレエのお稽古!」

「そんなに飲んだのに?今から運動するのか??」

「だめなの?」

「駄目だ。身体に悪いから止めなさい。心臓止まったらどうする?」
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