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私は犬
第23章 私の事情
余裕?

「今日みたいな時は、残してもいいから、食え。」

残してもいい?1口食べてドギーバッグに入れても構わないって事?犬も飼ってないのに?

帰り道、富士山が良く見える場所に行った。「なんで富士山に行かないの?」って聞いたら、「登ったら見えないだろ。」と言いながら笑ってた。そう言われてみればそうかもしれない。

近付き過ぎたら、全体像は見えなくなる。よーく見る為には、ほど良い距離を置かなくちゃ。

富士山が見える海沿いを走って、チラチラ隠れる富士山を見ながら山道を走って。着いた場所は山のてっぺん?ここは何処?

お茶を飲める施設があって、中に入ると硝子越しに富士山と駿河湾が広がっていた。これって、ちょっとした風景画みたい。

本当はね、山だけならスイスの方が大きくて綺麗なの。でも、海越しに白く装った山を見るなんて、初めてかもしれない。

日本的な美しさって、きっとこういう事を云うんだわ。

ふと、横を見ると綺麗な横顔があった。有史さんは黙っていれば綺麗というか、端正というか…。

指が長くて。腕なんてこうしっかり筋肉質で。上腕二等筋なんて、ちょっとたくましすぎて、首の下に回されると………。
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