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私は犬
第28章 アメリアの夢
お話ししたくないから、微笑を浮かべながら適当に相づちを打って、頭の中で歌を歌った。曲はマドンナのマテリアルガール。

現金な目の前の人にぴったりだと思う。7回は歌ったわ。

やっと、やっと、解放されて、建物の外へ出ると空気が凄く美味しい。身体中の酸素を入れ換えたくて、思い切り深呼吸する。

「……あの社長、どう思う?」

「どうもこうも無いわよ…。」

人を悪くは言いたくないけど…。私はあのパーティーで起きた事を、かいつまんで説明する事にした。

トイレで女性が、具合悪そうに洗面所にかがみ込んでいて。心配で、「大丈夫ですか?」と声を掛けて座れる場所まで案内した。少しフラフラしていたから手を貸したら、身体がもの凄く熱くて。

びっくりして、「誰か、人を呼んできます」と言ったら、「大丈夫だから呼ばないで」と懇願された。お願いじゃなくて《懇願》された。

病人を放っておけなくて、そのまま付き添っていたら、あの冬頭が来て、その女性に「早く立ちなさい。」と、偉そうに命令した。

「熱があるようです。お医者様をお呼びしましょうか?」と進言したら、「結構だ。構わんでくれ。」と言われて。

構わんでくれって…。病人をこういう席に連れ出す訳にはいかないでしょう?
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