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私は犬
第29章 諦めろ*
リリーとマルヤムと尚紅、私達4人は学部こそ違うものの、同じサマーフィールドカレッジで、大学時代の3年間を共に過ごした。

カレッジ内で、他にもスイスの卒業生達をちらほら見掛けたから、卒業したという気が全くしなかった。

寄宿舎ごと、別の場所へ引っ越しした感じ。

5人の中で経済を専攻したのは、マルヤムと私だけ。スイス時代に悩んでいたら、経済なら自分も行く。とマルヤムが言ってくれたのでそうなった。

カレッジは、それ自体が小さなコミュニティ。寝起きを共にして、同じ物を食べて。こういう所も寄宿舎と全く同じ。

4人とも、家族よりも長い時間を一緒に過ごした大切な仲間。というか、家族と同じだと感じてる。アメリアは、アメリカの大学に行ってしまったけれど、在学中も、何故かしょっちゅう行き来していた。

大学に入る前年、プロトコール・マナーの総仕上げのために、放り込まれたフィニッシングスクールも、5人一緒だったっけ…。

社交界デビューの為に、お作法の専門学校があるなんて、信じられない。ここも全寮制で、期間は1年間。

寮生活をしながら、大学受験の為に雇われた専任の家庭教師達にしごかれて、自由な時間なんて無かったけど。みんなが居てくれたから、毎日が凄く楽しかった。

殺人的なスケジュールをこなせたのも、面倒なお作法を何とか会得出来たのも、5人一緒だったからだと思う。じゃなかったら、絶対に無理だったわ…。
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