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私は犬
第30章 主導権*
「実は…」

神部君に食事に誘われた事なんかを、掻い摘まんで説明した。多分200文字以内に収まったと思う。

「で、来週末辺りお願いしたいのですが…。如何でしょうか?」

「そんなに待てないわ。」

はい?待てない?

「私が間に入ってあげる。神部君の連絡先教えて。」

ちょっと、鮎川さん、お願いだから落ち着いて…。

「本人の了承も得ずにそれは、ちょっと…。」

「じゃあ、神部君と直接話をしてくる。」

鮎川さん、行っちゃった。って、行き先は化粧室…。ここは、逆らわずにお任せしよう…。

人選ミスを、今さら後悔しても始まらない。どうにでもなれと腹をくくって席に戻って、中断していた作業を再開させた。

退社時刻の少し前、朝とは少しだけ顔の違う鮎川さんに、給湯室に呼ばれた。朝より睫毛増えたね…。黒目も微妙に大きいね…。

「明日に決まったから。明日の退社後、一緒に行くわよ。いい?」

いい?って。この雰囲気で断れるとでも?すっかり確約しちゃってるじゃない…。明日のバレエはお休みね…。最近、ちっともお稽古に行けてない。はぁぁ〜。

「はい。お願いします。ご面倒おかけして、すみません。助かります。」

鮎川さんの機嫌が治った。なんというか、分かりやすい人だな…。
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