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私は犬
第32章 我慢の限界*
オープンキッチンに立って、咥え煙草で食器を片付けている有史さんの姿が見える。こっち見て…。私をこんな姿にしてここへ放置したくせに、忘れたみたいに振る舞わないで…。

小さく身じろぐと、縄の刺激が、存在が、微かに強くなる。荒い呼吸で胸が上下すると、二の腕を、柔らかな縄がしっとり甘く咥え込む。

はぁはぁはぁ…。頭の中が痺れてきた…。

硬い縄と柔らかい縄、2つの縄の違った感触が、肌から伝わる…。二の腕と太腿に縄が食い込んで甘く痺れて…。手足の指が少し強張るような硬い縄を握り締めて…。有史さんがこっちを見てくれなくて…。

はぁはぁはぁ…。お股の奥が熱い…。堪らず腿を擦り合わせると、ヌチっといやらしい水音がした。

片付けを終えた有史さんは、ソファーの離れた場所へ腰を下ろして、新しいグラスに入れたウイスキーを、ゆったりした仕草で飲み始めた。

はぁはぁはぁ…。顔が熱い…。

ウイスキーを舐めるように飲みながら、私に視線を這わす…。

身体の奥から熱がこみ上げてきた…。さっきまで、あんなに見られたかったのに、こうして見られると恥ずかしくて堪らない…。

暫く離れた場所で、私を見つめていた有史さんは、部屋の照明を落とすと、グラスを持ったまま私の頭の横に腰を下ろした。
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