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私は犬
第32章 我慢の限界*
「うん。今行く。」

パソコンの電源を落として、中田さんと春木さんに、色々なお願い事を再確認して、席を立つ。

「何か起きたら連絡しますから。楽しんで来て下さい。」

「道中、お気を付けて。」

「ありがとう。」

秘密のエレベーターで1階へ降りると、痺れを切らした剛ちゃんが、怖い顔をして喚き出した。

「いい加減にして頂戴っっ!こんな日までパソコン弄らなくてもいいでしょっ!」

「…ごめんなさい。」

「外で車、待ってるわ。早く乗りなさい。」

文句を言われながら、迎えの車に乗り込んで目的地へ向かう。ビルの屋上に着くと、白いヘリコプターが待っていた。中に乗り込み、ほんのり冷たい皮のシートに腰をおろしてシートベルトを締める。後から乗った剛ちゃんが、座るなり身体を刷り寄せて手を握り締めてきた。

「わたし…。何度乗ってもチビっちゃいそうになるの…。お願いだから手を離さないでね…。」

ヘリに乗る前の剛ちゃんは、いつも神経過敏になって喚いたり、怯えたりして扱い辛い…。

「大丈夫よ。お話ししてれば着いちゃうわ。」

「駄目よ…。わたし、そんな図太い神経、持ってないんだからっっ。」

「陸路の移動にしてあげたいけど、時間が勿体ないわ。だから20分だけ我慢して。」
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