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私は犬
第32章 我慢の限界*
「あんた怖くないの?本当、可愛い顔して信じらんないっ。」

「慣れれば大丈夫よ。」

そう。慣れだと思う。怖ければ、窓外を見なければいい。おば様だってヘリは大好きよ。

それにね…。落ちたら、それが寿命なの。潔く良く天に召されればいいだけの事。私の手を握る剛ちゃんの手が、じっとり湿っている。眼下のジオラマみたいな街並みを見て、地球に寄生するカビみたいって思った。あのビル群がカビならば、そこで暮らしている私はなんなのだろう…。

高い所は怖くはない。ただ、好きになれないだけ…。

20分間なんて、あっという間に過ぎ去って、到着したヘリポートのあるビルから、再びリムジンで空港まで移動する。移動ばっかで面倒くさい…。

「やっと着いたわ。わたし寿命が5年は縮んだわよ。」

ヘリで5年縮むなら、飛行機にのったら寿命終わっちゃうわ…。と思ったけれど口には出さないでおいた。

「飛行機は平気なの?」

「ヘリよりマシよ。」

うーん…。その理屈が分からない。

搭乗手続き、出国手続きって面倒くさいの極みだわ…。おまけに時間を無駄にし過ぎる。自家用ジェットがあれば、専用ターミナルで15分も掛からず終わるのに…。

小さなジェットなら買えない事もないかも知れないけれど、私の稼ぎじゃとても維持出来ない…。
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