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私は犬
第32章 我慢の限界*
呼び方違うだけで同じお菓子なんだけどね…。やっぱり、叱られると言い返したくなるじゃない?

「どっから見てもマカロンじゃないのっ!」

うんその通り。どっから見てもマカロンです。

「チューリッヒでは、ルクセンブルゲリーなのっ。他地域ではシュプリングリとも言うけど。」

「お部屋にトリュフケーキのご用意も御座いますよ。」

春木さんが穏やかな声で、仲裁に入ってくれた。さすが春木さん。おかげで剛ちゃんも口を閉じたわ。それに、私の好きなものまで忘れずにご用意下さるなんて、秘書の鏡ね。

「おば様は、今頃どうされているのかしら…?」

トリュフケーキと聞いて、私と同じく、このケーキが大好きなおば様の事が思い浮かんだ。

「いつもの通り、ふて腐れてお部屋に閉じ込もっておいででしょう。真子さまのお顔を見たら、ご機嫌も良くなると思います。」

また、お部屋に閉じ込もっているのか…。大変だこりゃ。

車はアルプスの山々を臨みながら高速道路を滑るように走り、夕刻、遠くの山々が茜色に染まる頃、目的地の湖畔の小さな別荘へ到着した。

この別荘はお父さま達が遺してくれた。お友達たちの別荘に比べたら、質素で小さな建家だけど私には十分。
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