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私は犬
第32章 我慢の限界*
「ただいまっ!イザークおじさま。」

車から降りると、夫婦で別荘の管理をしてくれているイザークおじさんが、出迎えに来てくれた。

このご夫婦は、先代の管理人夫婦の息子さんにあたる。普段は近所のホテルに勤務しながら、屋内の掃除や庭の手入れ等の手配をしてくれている。

「お帰り小さなお嬢さん。見ないうちにすっかり綺麗になったね。テレーザは台所だよ。顔を見せてあげておくれ。」

軽いビズを交わしながら仏語でそうやり取りをして、漆喰と石壁の建家の中に入ると、中は何1つ変わって居なかった。

剛ちゃんはぶつぶつ言いながら、荷物を自分の部屋に運んでいる。あんなに沢山荷物を持ってくるから大変な思いをするのよ…。

春木さんはシェフに食事の指示を出しにキッチンへ行ったみたい。私も自分の部屋へ行って、手を洗おう。

キッチンでテレーザさんに軽い挨拶をして、自分の部屋に入向かう。扉を開けると、子供の頃から変わらない家具達が出迎えてくれた。赤い花柄の壁紙は可愛いけれど、23歳の女性には幼な過ぎるかも知れない…。そんな風に感じるなんて、大人になったのかな?

簡単にシャワーと着替えを済ませて、落ち着きを取り戻した時、剛ちゃんがドンドンと部屋の扉をノックした。

「早くしなさいっ。時間が無いわ。」

全く。少しは加減して欲しい。扉が壊れたらどうするんだろう…。
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