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第32章 我慢の限界＊

そう。はるばるスイスまで来たけれど、自由な時間は今夜くらいしかない。急がなきゃ。

ダミ声に散々急かされて、レマン湖畔の会場まで向かう。せっかく孝徳さんにチケットを頂いたのだから、堪能しなきゃね。

毎年モントルーで開催される、世界最大のジャズフェスティバル。野外ライヴは無料で観れるけれど、著名なアーティストのライヴは大概有料。チケットも、高い物だと５万円くらいする。

会場となる湖畔一帯は人だらけだった。隅田川の花火大会並みに人がいる。食べ物の露店がたくさん並んでいて、道端ではギターを持った人がビール片手に路上ライブなんかをしていた。とにかく、端から端までお祭り騒ぎ。湖面にまでステージ組んだりしてんの。落ちたら、間違いなく機材壊れるよね…。

水色のデニムの七分のセミワイドパンツと濃紺デニムの襟付きノースリーブシャツ。普通のＴシャツとデニムで行こうとしたら、剛ちゃんに着替えを命じられてこうなった。足元はカスタニエールのエスパリドーユ。髪型はルーズなローシニヨンのドーナツ。

ポケットに、マネークリップに挟んだスイスフランを突っ込んで、アジアのお姉ぇと並んで、ぷらぷら歩いてるけど。これ、現地の人から見てどうなんだろう？