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私は犬
第10章 お仕事でした
今日もたくさん積み過ぎて、ゆっくり慎重に運んだのだけれども。そーっと台車を止めた瞬間にバサバサーっと春のマッターホルンの雪崩れのように崩れ落ちた。

「あーあ…。」

でも、ちょっと楽しい。拾い集めるのが少し面倒くさいけれども。

次こそは少な目に。と毎回思うのだけれども、何処まで積んで運べるか試したい自分もいて。

ハッと時計を見ると、入室してから40分も経っていた。大変だわ。戻らなきゃ!

慌てて散らばった資料を棚に片付ける。今日の分の資料をいくつか持って、資料室から飛び出した。

慌てる時ほど慎重に。急ぐ時ほどゆっくりと。これはお母さまの口癖だった。だからなるべく守りたい。

慌ててる今だからこそ、慎重に歩いて席まで戻った。

資料を広げていると、案の定…。「九宝さん、ちょっと。」と声がした。渡辺さんの。

もう、悪い予感ほど当たるのはどうしてだろう…。嫌になるわ。

「九宝さん、あなた何分席を外していたと……。」

「申し訳ございません。」と頭を下げ、頭の中で歌を歌いながら注意が終わるのを待つ。

やがて静かになったのを確認して顔をあげ、「戻ってよろしいでしょうか?」と許可を得て、席に戻った。
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