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第3章 2.学園生活スタート。

そして、扉越しから聞こえたのは、くぐもった、声。



『ぁっ、先輩、誰かが……あっ、ぁっ……んっ』

『いいじゃん。どうせ、鍵かかってんだから』

『で、でも……っ、んっ…あ、や、やぁ……っ』



荒く乱れた息に交じるのは男女の声。


つまり……その。


私の頭の中は一瞬で真っ白になった。


「みみみっ、未結！とにかくほら音楽室行くよー！」


あまりの衝撃に放心してしまった私は、滝くんに引きずられるまま扉の前を後にした。





音楽室に向かう道中、なんだか気まずくって、私はうつむいたままだった。


滝くんが止めてくれたのに、へんにムキになっちゃったこととか学校であんなコトがある事実を知っちゃったこととか。


いろいろ恥ずかしくてたまらなかった。




でも、ちょっと気になることがある。


滝くんはどうして止めてくれたんだろう。


あのとき、物音には気づいていなかったのに。


二回目の物音は聞こえていただろうけど、中であんなコトが起こっているなんてすぐに想像がつくものなのかな。


「さっきのは、あんま気にしないほうがいいよ」


階段を上り終えたとき、滝くんが口を開いた。


「このガッコじゃ、よくあることなんだ」

「それってどういう――」


私は思わず立ち止まってしまった。


けど、そんな私の言葉をさえぎるのは予鈴のベル。


神様なのか誰なのか、それはわからないけれど、深く聞くなと止められているような気がした。


「ほら、急ごう」


滝くんに促され、廊下に出るとすぐ手前に音楽室の入り口がある。



積極的に聞くにはあまりに憚れることだったので私は先ほどのことは考えないでいることにした。