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ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人

私はほっとしたやら嬉しいやらで、頬の力がふにゃふにゃと抜けていくのをとめられなかった。
きっと今、すごくだらしない顔をしているはず。
鏡があっても見たくない。
「大切に使わせてもらいますね。ありがとう」
「ううん、こちらこそありがとう」
「ありがとう、ですか。斎宮さんはおかしな人ですね」
恭介くんはまたクスクスと声を押し殺すように笑った。
「そう、かな?でも、受け取ってもらえて嬉しかったから」
「僕も、こんな風に気遣ってもらえるなんて思ってなかったので、嬉しかったです。
滝に斎宮さんの爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいです」
恭介くんはいささか私の事を買い被りすぎている気がする。
今度は私が苦笑する番だった。
「爪の垢は恐れ多すぎるけど、お茶とお菓子くらいなら用意できるから。疲れた時はいつでも保健室に来てね」
「はい、是非」
なんて、取り留めもない会話を交わすと、私は今度こそ恭介くんを見送った。
保健室は、遊びに来るようなところじゃないのかもしれない。
もちろん最優先は怪我した人や具合の悪くなった人だけど。
体調不良な人だけじゃなくて。
疲れたな、休憩したいな。
そんな、一息つきたい人でも気軽に立ち寄れる場所になれたらいいな。
恭介くんを見送りながら、私はそんなことを思ったんだ。

