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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第106章 詩集「紡ぎ詩」 第二部  ガラス越しの艶(つや)
不思議なもので
 何故か昔から 私はこのガラス越しに見る紅椿が好きだ
 いや 紅椿というより
 曇りガラス越しに揺れるほのかな紅に惹かれるのかもしれない
 その慎ましさは 何も隔てるものがなく真正面から見る姿よりも
 どこか内側に少しの淫らさを秘めているような気がしてならない
 そう まるで咲き始めたばかりの蕾のような少女が
 汚れない美しさを誇りながらも
 艶やかな成熟した女の香りをほのかに漂わせるように
 
 今年もそろそろ椿の季節も終わろうとしている
 今朝 眺めた曇りガラス越しの幾つかの紅は
 春の心ない雨に打たれて揺れていた
 そこに眼を向けても紅色を見られない一年の残りの多くの日々
 私は幻の花を思い描きながらため息を零す
 ガラス越しの艶が私にほんのひととき もたらしてくれる熱さに
 想いを馳せながら
 
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