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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第110章 真珠の小物入れ~想い出のカケラ~
屋内では埃が立つので廊下に出て
ティッシュペーパーで少しずつ丹念に埃を払ってゆく
数十年分の埃はなかなかきれいにならない
わずかずつ取れていく埃が初夏の大気に舞って高く高く青い空に昇ってゆく
そのゆくえを眼で追いかけながら
まるで 一つ一つが自分の上に流れた年月のようだと思った
父が 祖父母が 旅だってからの
長い長い気の遠くなるような歳月
大切な人たちと過ごした追憶のかけらたち
立ち上った埃はやがて空の蒼に吸い込まれて見えなくなる
―もう少し濡れティッシュで拭けば、昔のようにきれいに戻るかもしれない。
そんなことを考えながら
愛おしさを持って掌の中の小箱を握りしめる
そうっとそうっと壊さないように
それは大切な遠い記憶だから
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