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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第117章 「幻影~在りし日の公園 」
実のところ 私はそんなことをまったく知らず
教えたのは夫の一言だった
私が広場で塔を背景に撮った写真を見た夫が
―まだチボリの塔はあったんか!
心底愕いた声で呟いていたからだ
物を知らないとはいえ 私も岡山っ子だ
「チボリの塔」の名前は知っている
かつて倉敷に「チボリ公園」という一大行楽施設があった
要するに公営の遊園地だ
開園以来 倉敷の新名所として脚光を浴び
新聞には
―チボリ来園者、ついに○○人突破。
 などと喧伝されたのを何度も見た
一度はチボリに行ってみにゃあいけん。
そんな時代も確かにあったというのに 時の流れは無情だ
あらゆる娯楽が増え 価値観が多様化してくれにつれ
昔ながらの遊園地から次第に人の関心と脚は遠のいた
人波でごった返していたかつての公園の興行収入が赤字になったと
またこれも新聞で書き立てられた
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