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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第162章 「師任堂の深紅の絹の包み」を読んで
ー富貴栄華よりも大切なのは自分を守って生きていくこと、愛する人々に傷を与えないことだ。私はそんな風に生きていこうと努力してきたし、後悔はない。(抜粋)
 自らの人生に対しての自負心が実は尊いものだと気づくサイムダン。
ー男の心を得ようとして化粧をして、体を売る妓生のように、金を得るために絵を華やかにしたり装飾したこともない。(略)見て美しいだけの花草図よりもあらゆる生物の生命の物語である草虫図を好んで描いてきたのも生物の生きようとする労苦が見えるからだった。(抜粋)
 苦労の末、自らの美貌と技芸で権力者の側室となり、栄華を極める日々を送るチョロンとサイムダンの再会、その時、チョロンは兄ジュンソをサイムダンが裏切ったと罵った。
 サイムダンは自分とジュンソを引き裂いた運命の不幸を初めてチョロンに語る。
 その後、晩年を迎え、何とはなしに健康の不調から自らの生命の長さを知ったサイムダンが人生を振り返っての述懐のシーンは深く、鋭く心に訴えかけてくる。
 最後はチョロンはサイムダンの困窮した生活ぶりに、哀れみさえ見せた。けれども、サイムダンは女ということを武器に人生を渡って栄華を手に入れたチョロンを羨ましいとは思わず、身を正して自分の信ずる道を歩いてきたことに誇りを憶えるのである。
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