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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第162章 「師任堂の深紅の絹の包み」を読んで
 いよいよ死期を悟ったサイムダンは、若き日、ジュンソとの想い出の数々を包み込んだ深紅の絹の包みを解き、想い出のよすがを手に取る。
 幼い頃から才能豊かな娘として将来を期待され、その期待に背くことのないように身を律して生きてきたこと、嫁いでからは姑や夫に逆らわず女としての人生を受け入れ、七人の子の母として生きたこと。
 自らの歩いてきた道を振り返り、彼女は呟く。
ー世の中の人は知らない。私の人生は何の苦痛も葛藤もなく順調に続いてきたと思うだろう。柔らかさが結局は強さに勝つという、順応制鋼という単語を、一日に何度もかみ締めながら生きてきたことを。私によって多くの人々が傷つかないようにと、萩の木の枝のようにおのれの体をかがめて、その傷に絶えながら生きてきた歳月でもあった。(抜粋)
 五十歳が近くなり、サイムダンは体調の不良を感じるようになり、自らの生命がそう長くはない予感に囚われた。ついに秘密の恋の形見をひそかに処分しようと決意する。その直前、彼女はどこかで生きているジュンソに手紙を書こうとしたが、ついに一文字も書けず、代わりに長年連れ添った夫に手紙もしたためた。
 この辺り、まさに涙なしには読めない下りだった。
 そして、深紅の絹の包みに長年秘してきた自らの過去を炎に投じようとしているまさにその最中、サイムダンは吐血して倒れ、意識を失ってしまうのだ。
 最後のシーンはサイムダンが亡くなり、息子のイ(後の大学者李栗谷)と娘メチャンが深紅の絹の包みについて、処分すべきかどうかと話し、イが金剛山にしばらく行きたいと旅立つシーンで物語は終わる。
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