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この出会いは…
第1章 最悪な出会いと最低な再会
一ノ瀬さんは私がどんなに辿々しい話し方でもちゃんと最後まで話を聞いてくれて、言葉に詰まってもちゃんと待っていてくれる。
そんな一ノ瀬さんのおかげで、私の緊張も解れ、電車がホームに滑り込んで来るまで、なんとか会話ができた。

男の人と一対一で話したのはいつぶりだろうか。
緊張はしているものの、私にとっては会話が出来たこと自体が驚くべきことだ。
今までは二人きりになることだって意識して避けてきた。
自分がちゃんと前進できそうな兆しに嬉しくなったが、ホームに現れた電車を見て、そんな気持ちはすぐに吹き飛んだ。

「すごい人だな。近くで何かイベントでもあったっけ?」

「は、入れますかね…」

思わず乗るのを躊躇ってしまうくらいの人の多さだった。
呆然と固まってしまった私に一ノ瀬さんが声を掛けた。

「知花ちゃん?ほら、入れる?」

見ると、一ノ瀬さんが先に電車に入って、私の入るスペースを確保してくれていた。
そのスペースに急いで乗り込み、ぎゅうぎゅうの車内になんとか収まった。
人と人が密着した車内は空気も淀んでいて、それだけで気分が悪くなる。

「大丈夫?」

一ノ瀬さんが気遣って聞いてくれるが、私は『はい』と答えるのが精一杯で、車内は会話なんて出来ない空気感だった。
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