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この出会いは…
第1章 最悪な出会いと最低な再会
飛び込んだ勢いそのままに、一番手前の個室に入って、便座にすがり付いた。
汚いとか構っていられない。
どんどん増してくる嘔吐感をやっと解放して、肩で息をする。
さっきよりももっと汗と涙でぐちゃぐちゃになっているであろう自分の顔を拭う余裕もない。
襲ってくる嘔吐感が苦しくて、それを解放するのに精一杯で、息を整えるのもままならない。

冷静になりかけては、痴漢されたことがフラッシュバックして、動悸が始まる。
お、男の人に触られた!気持ち悪い!気持ち悪い!
過呼吸気味になって、なかなか落ち着くことが出来ない自分にも嫌気がさして、涙が溢れてくる。

どのくらいそうしていたのか、いい加減にここから出なければ、不審に思われてしまう。
出なくちゃ…
なんとか息を整えて個室を出るが、鏡に写った自分に驚いた。
顔どころか髪型もぐちゃぐちゃで、私自身が相当な不審者だ。
水を出して手を洗うも、全然きれいになった気がしない。
顔も洗ってみるが、パンダ目になったマスカラはなかなか落とせない。

顔を洗ったことで、冷静さを取り戻し、化粧崩れは諦め、髪の毛だけは結い直して外に出た。
俯きながら歩いていたら、お手洗いの入り口付近に立っている人の足元が視界に入ってきた。

「一ノ瀬さん…」

顔を上げて確認した人物を見て驚いた。
入り口付近に立っていたのは一ノ瀬さんで、私の顔を見るなり、少しほっとしたような顔をしていた。

「あの…」

「帰ろっか?」

何事もなかったかのように優しく微笑まれて、思わず頷いていた。
駅構内を行き交う人がまばらになっていて、かなりの時間お手洗いに籠っていことが分かる。
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