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第1章 最悪な出会いと最低な再会

「い、一ノ瀬さん。あの…その、待たせてしまって申し訳ありません。」

「俺が勝手に待ってたんだ。謝んないで？それより、ちゃんと出てきてくれて良かったよ。さすがに中には入れないからさ。」

クスクスと笑いながらそう言った。

「よし、帰ろっか？」

その言葉と同時に一ノ瀬さんの手が私の手に触れたので、一瞬のうちに身体が固まってしまった。
そんな私を見て、一ノ瀬さんはパッと手を離した。

「あ、ごめん。思わず…」

驚いた顔をした後、すぐにいつもの優しい一ノ瀬さんに戻って、『行こう』と言って歩き出した。

「あの、どちらへ…？」

明らかに改札口からは遠ざかっている。

「タクシーで帰ろう。」

「え？」

「今日はもう乗りたくないでしょ？って言うか、乗らない方がいい。」

私の事を考えてくれていたのか。
確かに乗りたくはない。
でも、一ノ瀬さんをこれ以上巻き込めない。

「俺のことはいいの。勝手に待ってたんだから。」

まるで私の考えを読み取ったかのように、そう言ってにっこりと笑った。

「あ、ありがとうございます。」

「あのさ、少し話をしたいんだけど、タクシー一緒でいい？」

正直、帰る方向も一緒だから、タクシーは一緒に乗るんだと思っていた。
けれど、一ノ瀬さんは別々に乗るっていう選択肢まで与えてくれていて、その事に少し驚いた。
どうして、この人はこんなにも相手のことを気遣えるのだろう。

「知花ちゃん？」

「あっ、だいっじょぶです。」

慌てて返事をしたら、変な声になってしまった！

「ははは、ありがとう。」