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戦国ラブドール
第11章 苛立ちの半兵衛
 
 吉継は尊敬する人間に失礼を働くような性格ではないし、半兵衛も一方的に付き合いを避けるような人間には見えなかった。長い付き合いである行長に分からないのだから、大海が確執の原因を推し量れるはずもない。しかし悪さを働きそうもない人間達の確執は、心苦しいものがあった。

「……あたしも、小夜と一緒に見舞いに行こうかな」

「まあ、美女の顔は何よりの薬です。行って悪いという事はないと思いますよ」

「あんたじゃないんだから、半兵衛殿がそんな事で喜ぶとは思わないけどね」

「おっと、これは手厳しいこと。どちらにしても、半兵衛様は羽柴を支える頭脳です。早く良くなっていただかなければ」

 行長は愛想良く笑みを浮かべ、手を振り大海と別れる。相変わらず口も態度も軽い行長だが、髪の事をうるさく言われない分大海はほっとしていた。

 小夜を連れ見舞いに行こうと決めた大海だが、その日は結局夕刻まで忙しく機会がなかった。仕事を終わらせ、小夜と二人で部屋へ戻ってきた時には、もう日も暮れていた。

「――って事だけど、もう夜だし、今から見舞いじゃかえって気を遣わせちまうだろ。明日、二人で見舞いに行こう」
 
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