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戦国ラブドール
第13章 欲というもの
 
 文句こそ言わないが、虎之助が不機嫌なのは尖った目を見れば一目瞭然である。白けた行長は頭を掻くと、嫌味をこぼしながら足を動かし始めた。

「まったく、せっかく大海さんが新しい知識を知りたいと意欲を持っているのに。これだから、頭の中まで筋肉の野蛮人は困りますわ」

 それでも約束は約束、虎之助は、今にも切りかかりそうな顔をしながらも口を一文字に結ぶ。

「……仮にも羽柴の使者として来たんですから、父に顔を合わせる時は、その仏頂面をなんとかしてくださいよ」

 小西邸は、堺有数の豪商だけあって広い。能登の村では大海の家が一番大きかったが、小西邸はその家が軽く六つは入りそうな広さだった。取り次ぐ侍女も、長浜の城と変わらないくらいきちんとした身なりをしている。ところどころに飾られた南蛮由来であろう絵や花瓶も、おそらくは聞けば卒倒する値打ちものである。

「あんたって、いいとこのぼんなんだねえ」

 通された部屋で待つ間、大海は行長をまじまじ見ながら呟く。

「偉いのは父と、跡を継ぐ兄ですけどね。私は嫡男ではありませんから、汗水垂らして働かなければ」
 
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