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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
 
 だが、いくら薄暗い中とはいえ、大海の体を行長が目にすると思えば、虎之助ははらわたが煮えくり返る。たとえ親友の市松が相手であろうと、もう触らせたくないと思うのだ。いかに風呂が裸になる場所でも、天敵である行長が相手では、大海を見せる事すら許せなかった。

 だが、肝心の大海は虎之助の腹がどんなに熱いか、全く察していない。そもそも、虎之助が焦燥を抱こうが、まだ大海は誰のものでもないのだ。その想いは、勝手な願望でしかない。

(これは後で、また教えてやらないと駄目だな)

 大海が男を知らないのは、汚れを知らない純潔の証である。体はともかく心がまだ処女である事は喜ばしい限りである。だが今ばかりは、何も知らない大海が恨めしかった。

「怖い顔で考え込むのは結構ですが、早く食べないと冷めますよ? せっかくの料理ですから、美味しいうちにどうぞ」

 行長はそんな虎之助の心情を察し、皮肉めいた口調で話す。だが表面は普通の顔をしているため、大海はその皮肉には気付いていない。言葉に促され素直に箸を取っていた。

(やっぱり行長は、信用出来ねえ)

 ますます仲の悪さに拍車がかかり、更に二人の溝は深まる一方であった。
 
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