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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
 






 薄暗い部屋の中に、たちこめる湯気。息を吸えば、蒸された空気で喉が潤い温まる。行水では得られない、体が芯まで和らぎほぐれる感覚。湯気は、内に溜まる悪いものを汗として全て流した。

「湯治場みたいに思い切り湯を張って、中に浸かれたら最高なんですが……まあ、今日は蒸し風呂で我慢してください」

 大柄な三人が同時に入れば、中は大分狭い。行長に首を向けただけで、大海の肩と両脇を挟む二人の肩が触れた。

「これを我慢するなんて言ったら、そいつは贅沢だよ。あんたや虎之助はともかく、あたしまで良くしてもらって申し訳ないくらい」

「たとえ侍女であろうと、秀吉様の使者一行ですから。下手な饗応で機嫌を損ねられたら、今後の取引に影響します。こちらとて、純粋な善意ではありませんよ」

「理屈じゃそうでも、実際にそれが出来ない奴なんか山ほどいるだろ。身分を気にしないで振る舞えるのは、大物の証拠さ」

「それを聞いたら、父が喜びます。次に顔を合わせたら、ぜひ言ってやってください」

 すると大海は、不意に体を跳ねさせる。虎之助が大海の腰を抱いて、自分の方へ引き寄せたのだ。
 
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