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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
 
「だが、俺の話がお前の参考になるとは思えないがな。キリシタンのように正室一人だけを一心に愛したってなんの罪もない。身分違いの結婚だって、自分がそれを叶えるだけの力があれば押し通しも出来るだろう」

 高虎は虎之助の顔を窺い、そう付け足す。虎之助は未だに眉をひそめ、悩みの渦の中にいるようだった。

「……それと、お前が天啓を得るために必要なのは、市松だと思うぞ」

「市松?」

「お前と市松は、佐吉と吉継のようにべったりした仲じゃない。が、互いを補い合う友だ。全ての答えは、市松が持っているだろう」

 高虎は虎之助に酒を勧めながらそう語るが、虎之助は懐疑的だった。確かに市松は気の置けない友ではあるが、女に関して鋭い人間とは到底思えない。注がれた酒は、変わらず濁ったままだった。

「そう疑った目をするな。あいつは酒さえ飲まなければ、場の空気を読める男だぞ」

「そう……ですか? あいつは気も荒いですし、しょっちゅう誰かと諍いを起こしてますが」

「まだ若い武士が、多少の荒さもなければ逆に不安だろ。それに諍いという点では、お前も人の事は言えないぞ」
 
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