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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
 
 高虎に指摘され、虎之助は言葉に詰まる。行長との諍いを思い出せば、返す言葉はなかった。

「まあ、何にせよ、お前達はいい環境で暮らしてるんだ、思い切り悩めばいいさ」

「高虎さん……」

「毎日怠けられちゃ困るが、たまに酒を酌み交わすくらいなら付き合ってやる。人は息抜きもしなきゃ生きていけないからな」

 高虎には、自分の行く道が真っ直ぐ見えているのだろう。全く迷いなく濁りを飲み干す姿に、虎之助は同じ武士として敬愛を覚える。

(だが……同じ生き方を、俺は出来そうもないな)

 高虎の生き方は、自分にも相手にも強さを求め、昇る気概のある人間にだけ許される生き方だ。高虎は虎之助と同じ年頃の際、初めの主家である浅井が没落していく中命懸けで戦っている。秀吉の庇護で育つ虎之助とは、正反対の人生を歩んできたのだ。

 そんな虎之助が同じ事を口にしても、重みが違う。高虎の言う通り、悩み、自分の答えを見つけなければならないのだろう。

「ありがとうございます、高虎さん。少し……気が晴れた気がします」

 それでも高虎の生き方は、虎之助に感じるものを与える。明日こそは、素直に監視へ戻れる気がしていた。
 
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