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戦国ラブドール
第19章 愛憎
すぐにでも小夜へ父親の件を報告したい大海だったが、夜まで小夜と顔を合わせる機会がなく時は過ぎる。日が暮れ仕事を終えると、大海は駆け足で侍女達の屋敷まで戻った。
「小夜!」
だが大海は、襖を開いた瞬間背中に寒いものを感じる。部屋で待っていた小夜の隣には、半兵衛が座っていたのだ。
「あ、お姉ちゃんおかえり! どうしたの、そんなに大きな声出して」
「遅くまでお疲れ様です、大海。何か、嬉しい事でもありましたか?」
二人は笑顔で大海を迎え、一見すれば穏やかな日常である。だが大海は背中の冷たさに、それ以上足を踏み入れられなかった。
小夜は、何も気付かずお気に入りの半兵衛と歓談していたのだろう。だが大海には、微笑む半兵衛から黒い靄が立ち上るのを感じたのだ。
「それでは小夜さん、大海をお借りしますね。いつもの時間には、帰しますから」
「はい。行ってらっしゃい、半兵衛さん」
半兵衛は立ち上がると、入口で固まる大海の腕を掴む。そして大海本人の同意を得ないまま、部屋の襖を閉めてしまった。
半兵衛は、半ば強引に大海を引き連れ屋敷の玄関へと歩いていく。それでも初めは少し引っ張るくらいだったが、外へ近付くにつれ、痛みを感じるほど強く引きずられた。