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戦国ラブドール
第21章 急転
 
「ですが、半兵衛様なら、わざわざ犯人と組まなくても、大海を連れ出す事は可能じゃないですか。小夜を傷物にして、得をする人間なんて誰も――」

 虎之助はそこまで話して、ふと思い出す。小夜が傷付き、市松が捕まる。それによって大いに得をする人間が、一人いる事に。

「まさか、自作自演……?」

「どういう事だ、虎之助」

「小夜は、市松を深く恨んでいました。人が変わったみたいに市松を罵倒していたのを、俺は確かに見ました。そもそも、なんで小夜は、犯人を市松だと断言したんですか? 市松を陥れるために、自作自演した可能性もあります」

 それならば、半兵衛が手を組む理由にはなる。半兵衛と小夜は親しく、また半兵衛自身も、執着している大海を奪った市松を恨んでいてもおかしくはない。市松が犯人ではないのなら、小夜は確実に嘘吐きである。そしてその嘘を吐く強い動機を、小夜は持っていた。

「半兵衛様と組んでいるなら、事前に半兵衛様から精を貰って、髪や体に塗れます。痣なんて、自分でも簡単につけられますし、自作自演でもあの悲惨な状態になる事は可能です」
 
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