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禁断の果実に口づけを
第3章 秋山洋子のアクシデント
 

 洋子は代車に乗り、顧客訪問に向った。

 予め、連絡を入れておいたので、多少の遅れは快く許して貰えた。

 長年、社員に団体保険に加入して下さっている我社の超お得意様。

 そこの社長は、時間に厳しく、気難しいところがあると所長に言われていたので、洋子は余計に焦っていたのだ。

 新しいタイプの企業保険が出来たので、ご機嫌伺いをしながら、やんわり勧める事を言い渡されていた。

 『考えておきますよ』と言われ、保険の話は保留になったが、機嫌を損なわなかっただけ良しとしょう…


✾✾✾

 帰り道、貰った名刺の場所に向かい車を運転する洋子。

 仕事が無事に終わった事に安堵はしたが…… 
自分が、職場で嫌われている事はしみじみ分かった。

 一番助けて欲しくない、川端伊織に助けられた事も洋子のプライドが許せない。

 誰かがパンクする様に仕掛けた釘にも腹が立った。


 『それだけ嫌われてるなんてね‥‥‥』


 嫌われる事にも慣れている。   
慣れているはずでも……


 それでも、不器用な洋子の頬に自然と涙が伝う…‥


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