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禁断の果実に口づけを
第3章 秋山洋子のアクシデント


  名刺の住所の岩谷自動車は、本当に会社の近くにあった。
代車を駐車場に停めて中に入る。


 さっき駆けつけてくれて、名刺の主である、整備士の片岡伸介が一人で居た。





「あの‥‥
先程は有難う御座いました。
遅くなってしまい申し訳ありません!」

 洋子は深々と頭を下げた。

 「いや、俺は構わないですよ。
タイヤ交換しときましたから」

 「有難う御座います」

 お礼を言って、代金を払って帰ろうとすると‥‥


 「言おうか、言わまいか悩んだけど‥‥
釘って、さっきは言ったけどさ……
完璧にパンクする様に鋭い刃物みたいなもんで、タイヤを裂いてあったよ。
気をつけた方がいい。
警察に届けた方が‥‥」


 その言葉の後、洋子はボロボロと涙を溢し、初対面の伸介の前で泣いていた。
車に細工される程、嫌われている事を改めて実感した。
親切で言ってくれてるのは分かっていても、悔しいやら悲しいやらのいろんな感情が湧きだし、我慢の糸がプツリと切れてしまった。


 「おい!
ちょ‥‥
お客さん‥‥
マジで‥‥
あちゃー
悪りぃーな。
俺、嘘つけないたちでさ‥‥」

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