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禁断遊戯~背徳と罪悪の狭間(はざま)で~
第5章 刻印


 遠くから聞こえる鳥の囀りと、カーテンの隙間から差し込む光に、身を竦める私はゆっくりと目を開ける。


「……おはよう」
「! お、はよう……っ?!」


 目を開けた瞬間、飛び込んで来たのは、優しく笑んでいる悠の顔。
 色々な意味で、恥ずかしさがこみ上げてきた私は、顔を半分隠して、少し身体を動かした。

 その時──小さな音と共に、私の中から、“何か”が溢れてくる。



──え……?
 まさか……そのまま、なの?


 そんな私の心を見透かしたのか、悠は小さく笑って、耳元で囁きながら、下腹部を擦る──。



“たまには、こういうのもいいでしょ? まだ、欲しい?”



 溢れ出てきた“何か”の正体は、身体の奥に注がれた悠の熱。
 そのままで──というのは、一度もない。
 だから、驚きも隠せなかったし、“まだ、欲しい?”と聞かれれば、深層心理を暴かれたようで、私の顔は更に熱を持った。


「……っ!」
「千夏ちゃん、顔真っ赤。でも……その顔、俺以外のヤツに見せたらダメだよ」


 聞こえて来た悠のその声は、いつもと同じようで同じではない。
 優しい声色に対して、強い口調──それが何を意味しているのか、気づいてしまった。



──悠ちゃん……。
 知っていて、何も言わない……。
 私は、どうすれば……いいの、かな?


「……うん。悠ちゃん以外、考えられない」


 いくら考えても言葉は見つからず、ただそれを伝える事しか出来ない私。
 相手が誰なのか──悠は、もうすで気づいているはずなのに、何も聞かない。

 その事に、不安と疑問を感じ、ベッドの中で身を竦める。


(あったかい……このまま、ずっと居られたら、いいのに……な)


 と、何も言わずして、悠はそんな私の身体を強く抱しめてくれた──。



 身体中に付いた赤い印と、身体の奥深い場所に注がれた熱。
 そして、思い出すだけでも、身体が火照る甘い痺れは、私へ刻印として残す。


 それらの余韻に浸っていた私が、気づくはずもなかった──この時間が、これから起きる出来事の始まりだという事に。

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