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優しい愛には棘がある
第2章 Moon crater affection





 いづるの実父は娘が物心つかなかった頃、その寝顔を自慰の道具にしていたという。成熟とはかけ離れた肉体に、ともすれば触れてもいたかも知れない。


 そこを母親が見咎めた。それでいづるは由多香達に引き取られることになったのだ。


 真相を知らされたのは四年前、いづるがあの寝室に初めて呼ばれた夜のことだ。


 血縁こそなきにせよ、娘に肉体関係を強要した親達に、いづるは初め反論した。

 だが、佐和が語ったのは生家でのおぞましい事実──…優しかった母親は、抗うなら父親の元に突き返すといづるを脅した。

 性教育とかこつけて、佐和はいづるを、彼女の性的嗜好における欲望を満たすためにもてあそんだ。並々ならぬ加虐にこそ快楽を見出す佐和は、あくまで愛する由多香相手では、気後れするところがあるようだ。


 初めての夜もそうだった。

 いづるの何も知らなかった肉体は、血の気が引くような術で馴らされた。
 初めは指で、それから玩具で、最後には子宮が痛みに呻吟するまでかき乱された。ひたすら許して欲しいと訴えた。それでも強制的なオーガズムを繰り返し強いられるだけだった。佐和はいづるの髪を切り、男の姿を倣わせた。

 いづるは言いつけられるまま、由多香の道具になる一方で、佐和の慰みものにもなっていた。



 それでも、二人の育て親に失望出来ない。月子をこれだけ愛していても、家族として過ごした記憶がまとわりついて離れない。


 二人は本当にあたたかかった。今も──…。
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