この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
星の島で恋をした【完結】
第4章 《四》
     *

 履き物を見つけたものの、セルマは結局、気怠い疲れを感じて、ガゼボの端、陽の当たらない木の床に直接座ってぼんやりとしていた。



 先ほどまでの狂乱が過ぎてしまえば、この島の異常さを思い出して思わずセルマは息を詰めていた。

 海から島、島から海に吹いていく風は妙に透明で、俗なセルマにとってはそれはひどく不安になるものだった。

 セルマがここにいることで、この島を吹き抜ける風を汚しているのではないか。

 そんな気持ちがもたげてきて、息をするのも苦しくなってきた。

 だから膝を抱えて小さくなっていると、背後から笑い声がしてきた。振り返らなくてもそれがだれだか分かり、むっとした。

「……なに、笑ってるのよ」

 笑っているだけでなにも言わない男の態度に痺れを切らして、白い履き物の先を見つめながら口だけで突っかかった。態度と口調が拗ねているようになったが、実際そうだったのかもしれない。案の定、男はまた新たに笑っていた。

 男の気配が近くなっているのに気がついたセルマは、丸めていた背中を伸ばして口を開いた。

「来ないでよ!」
「傷はどうだ」

 セルマの拒否の言葉に重ねるように、まだ少し笑っているような声音ではあったが、まさかの気遣いの言葉をかけられ、セルマはとっさになにも返せなかった。

「その肩の傷、思っているより重症だからな」
「……え」
「あんた、強いな。呪いの矢を受けて生きているんだから」
「──呪いの、矢」
「そう。カティヤに向けられた呪詛が込められた矢だ。対象者ではないあんたが受けたからかもしれないが、それでも弱ければ死んでいた」

 そんな恐ろしいものだったとは知らず、セルマはぞくりと震えた。知らず自分の身体を抱きしめていた。

「あんたは大切なカティヤを護ってくれたし、カティヤからも頼まれたからな。今は俺の力で痛みを抑えているが、また痛み出すからあまり無理をするな」

 セルマはそっと左肩に手を当てたが、あれほど痛かった場所は多少の違和感があるだけだった。

「あと、腹は減ってないか」
「……え」
/137ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ