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星の島で恋をした【完結】
第4章 《四》
 それを思うと、やはりセルマはカティヤ王女を護ることができてよかったと思う。そばにいたからこそできたこと。

 また同じような出来事が起こるかもしれない。いや、同じようなことだけではない。カティヤ王女は常に危険にさらされている。彼女が無事に嫁ぐまで護ることがセルマの使命。それならば、この矢を受けて死ななかったことに意味があるのだ。

 どんな辱めを受けても──そう、あれが男が言うように治療であったとしても、なかったとしても──セルマは傷を治して、カティヤ王女の元に一刻も早く戻らなければならない。



 傷を負ってからこちら、ずっと沈み込んでいた気持ちは男が痛みを押さえてくれたことによって、ようやく前向きになることができた。



 セルマが受けた矢尻には毒などは塗られていなかったと、治療をしてくれた王宮医師から聞いていた。

 矢はかすって傷を付けたのではなく、セルマの左肩に刺さったが、深かったわけではないため、矢の重さで矢尻ごと落ちた。とはいえ、刺さった割には傷口は縫うほどでもないと説明をされた。

 しばらく痛むのは、傷ができているせいだと言われたが、それにしても説明された内容に対してひどく痛むと疑問に思っていた。

 今までセルマは無傷だったというわけではない。訓練などで怪我をすることもあった。だから怪我をしたらどう痛いのかというのは知っていたが、肩の傷はずきんずきんと疼くのだ。だからこれはおかしいと思っていたのだが……。



 男が言うように、これが呪いの矢ならば──。



 この痛みは、呪いのせいだ。ずくずくと疼く度、セルマの中で呪いが育っているのだろう。

 王宮医師はまさかあれが呪いの矢だったとは思っても気がついてもいなかったから、簡単な処置を施しただけだったのだろう。

 セルマが知らないうちに身体の内に呪いがはびこり、下手をすると護るべきカティヤ王女に牙を剥いていたかもしれないのに、だ。

 だけど幸いなことにカティヤ王女はそのことに気がついたのだろう。

 セルマはカティヤ王女に呼ばれて、この島の説明を受けたときのことを思い出していた。
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