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星の島で恋をした【完結】
第4章 《四》
 少し気持ちが楽になったセルマは、もう一度、空を見上げた。

 空には、昼も夜も関係なく、本当は星があるという。だけど昼は太陽が明るすぎて星は見えない。

 もしそれが本当ならば。

 昼の空にあるはずの星とセルマは同じだ。

 セルマはカティヤ王女の昼間の星だった。彼女の側にいて、目立たずに彼女を護るのが仕事であり、セルマの使命だった。

 ──だからカティヤ王女を護ってセルマが呪いの矢を被弾できたことは、使命のことを思えば僥倖だったのだろう。

 だけど。

 せっかく浮上した気持ちは、瞬く間にしぼんでしまった。

 それは継続してこその幸せであり、今回の一回こっきりだなんてそれでは意味がない。

 ……いいや、それでいいのだ。

 空の星が一つくらい欠けたところで夜の空が真っ暗になってしまわないように、セルマもあの空の星の一つと同じなのだ。

 セルマがいなくなったところでカティヤ王女はしばらくの間は悲しむかもしれないけれど、空の星と同じくいくつも瞬いているそのうちの一つなのだ。すぐにセルマのことなど忘れてしまうだろう。

 いや、自分を星と同列に語るなんて、それこそ星に失礼かもしれない。

 夜の星は輝いているけれど、セルマは昼も夜も輝いてはいけないのだ。カティヤ王女の側にいて、目立たずにいなければならないのだから。

 だけど今は、それさえもできない。

 カティヤ王女は優しいから、セルマに満足に取っていなかった休暇を与えてくれて、しかもこの秘密の星の島で静養するように言ってくれた。

 ここに来て、傷が治って前と変わらぬ状態でカティヤ王女を護れるように身体が戻るかどうかの保証はないが、期待に応えたいと思っている。



 だけど──。

 あの男が言うように、あれが呪いの矢であったのならば。

 もしもこれをセルマではなくカティヤ王女が受けていたらどうなっていたのだろうか。

 矢を受けたとき、肩だったのにも関わらず、一瞬、心臓が止まったかのような衝撃を受けた。今まで身体に矢を受けたことがないから分からないが、こんなにも強く感じるものなのだろうか。それとも、これは呪詛が込められていたから?

 これをカティヤ王女が受けていたら──そんなことを思ったら、ぞくぞくとした悪寒が身体に走った。
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