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花咲く夜に
第8章 旅立
『貴斗の心臓の音、
すごく速いよ?』


『………めっちゃ緊張したもん……
めぐるのお母さんに頭下げるとき。
責められるの覚悟してたし…………
ここに、居るんだもんなぁ』

貴斗は手を伸ばしてめぐるの下腹を撫でた。


『………ありがとう』


『ん?』


『貴斗、ありがとう。
私と出逢ってくれて』
めぐるは左手を空に翳す。

指輪にダイヤモンドが一粒光っていた。


『あ。
そういえば………
何で醍醐山桜に居たの?』


貴斗は頬を赤くした。

『……叱られると思って。黙って留守にしたことも、めぐるを妊娠させちゃったことも。ちょっと気持ちを引き締めてから帰宅しようと』


『ふふっ……
私びっくりしたよ。
貴斗が居なくて不安で寂しくて、
爆発して泣いてたらいきなり居るんだもん』


貴斗の指がめぐるの髪を撫でた。


『伸びたな、髪』

『うん。
ね、ぎゅってして』

貴斗は体を軽く起こし、
めぐるを抱き締めた。



膨らみを触る。
『んっ………』

唇を重ねた。

徐々に激しいキスになっていく。


『………っはあっ……』
貴斗はめぐるに体重をかけないように気をつけながら、
覆い被さった。



目が合って見つめ合う。

貴斗はめぐるの前髪を手のひらで上げた。

白い額。


そこに唇を着ける。

チュッと……

『めぐる。
めぐる…………』

貴斗は何度も何度も名前を呼んだ。
愛しげに。
瞳が和やかに光っていた。


―――2人で、〔これから〕が始まる。
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