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花咲く夜に
第8章 旅立
―――そして、
翌月7月10日に2人は籍を入れた。

めぐるの誕生日だ。



隣町にある古い写真館で、結婚写真を撮ってもらうことに決めた。

『式の費用くらい、
あたしが出したげるのに……』
式はしないという2人。不服そうな昭恵に、
めぐるは『お気持ちだけありがたく頂きます…
昭恵さんには今までお世話になりすぎてるし』
と丁重に断った。



『これからも世話になるだろーしな(苦笑)』

タキシードを着た貴斗が写真館にある更衣室から現れながら笑う。


『………わ………
…………めぐる………』


――めぐるは、
ウェディングドレスを着ていた。

純白のフリルが柳腰の下に広がり、
肩を出したスタイル。

首元にはこのほど恭子から譲り受けたネックレスが光っていた。

髪をアップに結い、
ドレスを纏っためぐるは神々しい。
貴斗は涙が滲んで『ケホッ…』と咳払いで誤魔化す。

『めぐる。
綺麗だ』
貴斗はめぐるの手を取り、カメラマンがスタンバイしている部屋へ移動する。




互いに緊張しながら立ち、カメラマンの『撮りますよ〜〜〜』
の合図で撮影が始まった。

見つめ合う写真。
笑い合う写真。
2人肩を並べて、
前を向いている写真。


撮影を終えると、
カメラマンが作業のためかふと背中を向けた。

貴斗はめぐるの耳許に唇を寄せて、
囁いた。
めぐるが泣き笑いの顔になる。

カメラマンは振り返って、『おっ、いい顔』と不意打ちにそのシーンを撮った。


何を囁いたのか?
それはきっと、深い愛の言葉なのだろうけど………
〔2人だけ〕にしか分からない。
これから続く日々を、2人で歩幅を合わせて歩いていく。


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