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花咲く夜に
第3章 興味
『昭恵さん。
貴斗さん、遅いですよね…………』
夜10時半。

座敷で夕飯を取り、
そのまま寛いでいる。

昭恵は煎餅をバリッと割り、
口に放り込んで噛みながら『ほっときゃいいよ、
ある程度の歳の男なんだし』

『ですかねぇ』


『風呂、沸かそうか。
アンタたまには一番に入りなよ。
何時も最後だろ〜』

昭恵さんは「めぐるちゃん」と呼んだり「アンタ」と呼んだり色々変わる。


『……では、有り難く………』
めぐるは立ち上がって浴室へ行き、
湯を張る。
珍しいのだが、この家は未だ〔五衛門風呂〕だった。

湯を注ぎ、
8分目くらいまで入ると外に回り火を点ける。

木屑だけではなく、
紙も入れて燃やす。


そのため、
葛城家では【燃えるゴミ】は自宅処理なのだ。


〔五衛門風呂〕は、
何のことはない…
コンロに鍋をかけるのと同じ要領だ。
下から燃やすだけ。
ただ、温(ぬる)くなると外から火を増やさなくてはならない。

が、
年々手間になったらしく……
蛇口からお湯が出るように付け替えたのだと昭恵から聞いた。

更には「もし飛び火したら大事だしね。
アタシもアンタもタカも丸焼きだよ」と火事防止も考慮したそうだ。


下は窯である。
放置しても鎮火はする。


めぐるはここに来てからというもの、
未知との遭遇ばかりで楽しくて仕方なかった。


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